テキスト:竹内和雄著『スマホチルドレン対応マニュアル』(中公新書ラクレ2014年)
2017年3月19日(日曜)
3月の学習会では、昨年12月に引き続き、再びスマホ問題を取り上げました。
今回も、参加された鶏鳴学園の生徒の保護者の方から、子どものスマホの使い過ぎや、ラインでの友人関係の問題など、様々な悩みが出されました。
中高生の間はスマホは持たせないというのも一つの対策ですが、大学生になってスマホ依存に陥っても困ります。
今回はその具体策を考えました。
いつから子どもにスマホを持たせるのか、持たせないのか、ネット犯罪やトラブル、スマホ依存にどう備えるのか、親に何ができるのか。
その具体策です。
以下、一つの案として、参考になさってください。
また、参加者の感想の一部も掲載させていただきます。
子ども自身に安全対策や使い方の案を出させよう
子どものスマホ問題について肝心なのは、フィルタリング方法などよりも、子ども自身のトラブル対処の意識の問題です。
その主体的な意識を高められなければ、親が何をしようがスマホ依存もネット犯罪も防げません。
子どもといたずらにもめるばかりで、そのいたちごっこにへとへとになるばかりです。
しかし、子どもが意識を高めるために、参考になりそうな資料はなかなかありません。
今回のテキストも、子どもたちのリアル社会の問題をベースとしてスマホ問題を論じ、また最近のネット犯罪などをわかりやすくまとめている点ではよいのです。
しかし、対策案は「大人の常識を普段から教えよう」、「子どもの言い分をしっかり聞いてあげよう」といった、思春期や自立といった視点の無いものです。
親子で交わす「使用ルール」も、他の本やネット情報と同様、利用時間や場所、禁止事項を並べたお決まりのパターンです。
たとえば、「夜9時~朝6時は電源を切る」、「夜9時に居間の充電器に置く」、「自分の個室では使わない」等々。
思春期、反抗期の子どもに対して、こういうルールが有効に機能するはずがありません。
親や教師が何を言おうが、本人自身の意志がなければ本気では動けなくなるのが思春期です。
この大事な成長に後戻りはないのですから、子どもが自分で本気で考え、自分の人生を生きようとする、自立に向けて、試行錯誤を重ねるしかありません。
そんなことがすぐには実現しないということ、しかし目標は見失わないという二つの覚悟が必要でしょう。
そこで、スマホ問題の結論として、子ども自身にスマホ問題を調査、学習させ、安全対策、使い方、契約形態などの案を出させた上で、親子で話し合うのがよいと考えました。
使用時間についても、子どもの案に対して親は意見を述べ、しかし強制や管理はできません。
その前提の上で買い与えるのかどうかを判断し、見守る覚悟が必要です。
問題は、そもそも親子での話し合い自体がムズカシイことでしょう。
しかし、失敗しながらも、お互いに冷静に話し合おうとしていくことが、子どもの自立に向けた歩みになると思います。
料金のことなど親が最終決定権を持つ事項はきちんと示した上で、対等に話し合っていく試みです。
スマホ問題も、親が子どもを管理する形から、子どもの自立へとシフトしていくための、親子双方の試練であり、またチャンスなのではないでしょうか。
以下、具体策の考え方、進め方をまとめてみました。
一つのたたき台として、参考にしてください。
目標
- 子どもの安全(ネット犯罪、トラブル、依存対策など)。
- この問題を通して、子どもの自立を図ること。
対策
(1)親自身がこの問題について学習し、方針と覚悟を固める。
①いつから使わせ、どう使わせたいのか。
- 子どもがスマホ問題について自分で調査、学習できるようになってから、携帯またはスマホを使わせることを検討する。おそらく中学生以上。小学生はキッズ携帯。
- 子ども自身の、安全対策、使い方、契約形態、料金等についての案をもとに、親子で話し合い、合意すれば持たせる。
②安全対策と教育、そしてトラブル対処をどう行うのか。
- 子どもがスマホやアプリの仕組み、ネット犯罪や依存の現状についてのテキストを選んで学び、対策案を出す。親も学習した上で話し合い、必要なら補足する。
- フィルタリングは犯罪対策として年齢に応じてかける。Wi-Fi対応やアプリ制限も。(携帯ゲーム機、iPad、音楽プレーヤー等も対策が必要)
- トラブルが起こることを想定し、その際は親に相談するように伝え、かつ学校や児童相談所、警察、子どもの人権110番、その他の相談機関への連絡方法も伝える。
(2)子どもと話し合う
①親として、子どもが中高生時代をどう生きてほしいのか、何を望むのか伝える。(できれば、子どもが調査、学習、立案する前提として、前もって伝える)
- 「自分づくり」をしっかりやってほしい。どのように生きていきたいのか、大学で何を勉強したいのか、夢をつくっていくことを望む。
②子ども自身の、安全対策、使い方、契約形態案をもとに話し合う。
- 子どもの安全対策とその意識を確認し、また高める。
- 以下についても話し合うが、最終決定権は親が持つことをきちんと示す。
*親の名義で契約し、それを子どもに貸与する形にする。
*契約形態と月々の料金の上限を定め、超過分は子どもが小遣いから支払う。課金の制限、または禁止。
*個人情報入力やアプリのダウンロードの制限、フィルタリング。 - 使用時間や場所についても意見交換するが、中高生に対してそれを逐一管理することはできないし、するべきではない。
- 子どもの意識や親子関係の状態をもとに使わせるかどうかを判断し、使わせた後は、基本的にはゆったりと見守る覚悟を持つ。
③使わせる場合は(1)②はすべて実行し、使い始めてからも必要に応じて話し合い、またトラブルに対処する。
◆参加者の感想より
大学生の母、Aさん
それぞれの家族にそれぞれのスマホに対するルールがあるであろう。
ガラ携から当たり前のようにスマホに買い換えた我が家の場合、大したルールも無くこれまでの暗黙の了解が通用すると思っていた。
しかし、子供たちはもはや、スマホは電話の機能以外の使い方しかしていない。
時間があればLINEやSNSをして、インターネットとにらめっこをしている時に何を言っても聞く耳を持たない。
違う時間の過ごし方をしてくれないものかとやきもきするが、子供たち自身がどう過ごしたいのか、自分たちは何を求めているのかを考えて具体的に自立に向けて実行していくしかない。
親が時間を管理しようとする前に、もっと話し合っておくべきであった。
例えば、料金やトラブル対策等についてである。何も話し合っていない、何も調べていない、何も考えていない。
反省すべき点は、スマホとの付き合い方ではなく、私たち親子の関係、また、私の生き方そのものであった。
高校生の母、Bさん
スマホにまつわる悩みついては、子供の成長とともに少しずつその内容は変化しながらも、常に漠然と頭の中に存在してきました。
今回、テキストを読み、いろいろな意見や体験などを聞き、自分の考えを言葉にすることによって、この問題への向き合い方が少し整理されたような気がします。
皆さんとの話し合いを通して改めて感じたことは、子供たちの抱える真の問題は別のところにあり、それらがスマホを通して浮かび上がっているに過ぎないということです。
依存を防ぐために時間や場所を決め、フィルタリングをしたとしても、それらは対処療法に過ぎず、結局のところ、それらの問題に向き合うこと無しに本当の解決への道筋は見えないのだと思いました。
大学が研究から社会人教育の場へと変化する中、その余波が高校、中学、小学校にまでも及び、親が感じる不安やプレッシャーが子供の時間や自信を奪っているのかもしれません。
その逃げ場として、深夜のゲームやLINEが機能している側面もあるのではないでしょうか。
スマホに溺れず、ツールとして自在に使いこなせる強さを育てるためにどうすれば良いのか、これからも試行錯誤を重ねて行きたいと思います。
高校生の母、Cさん
高校生男子の親として、学校の保護者会でもママ友との会話でも頻繁に話題に上がるスマホ。
私も頭を痛めていたのだが、この問題を取り上げた本があることも知らなかったし、当然ここまで考察されたものを読んだことはなかった。
私はスマホやネットを、これからの時代なしでは生きていかれないものである一方で、ついつい依存してしまう危険があり、勉強時間が確保できなくなるリスクがあるもの、と思っていた。
正直、自分自身の学生時代にはスマホはおろかネットすらなかったので、この問題をどのように考えたら良いのかという視座もなかった。
今回学習会で、この本を読んで、学習会で参加者の皆さんとお話をして気がついたことは次の二つだった。
- 今の子どもたちは、リアルで知っている人たちとの対面でのコミュニケーション、電話でのコミュニケーション、文章でのコミュニケーション、という段階を十分に踏むことなく、未成熟な年齢で世界中と繋がっているとも言えるネット上のSNSの世界にデビューしてしまう。
- 思春期は、友達から自分がどう見られているか、友達との関係性に過敏になる時期であるので、LINEなど友達とのSNSは子どもの生活に大人が想像できないほど大きな影響力を持つ。
いずれもとても難しい問題だが、このような状況に子どもたちが置かれているという点についての理解がなければ、子どもと話し合うことは難しいだろう。
そして、今回の学習会で改めて気づいたことは子育ての最終目標は「子どもの自立」だということ。
スマホ問題も、勉強時間の確保という視点だけではなく、最終的には、スマホやネットとの付き合い方を自分で考えて自律できる大人になるという視点から考えることが大切だ。
スマホとの付き合い方は私自身難しい。
でも、学習会に参加して2時間以上たっぷりと皆さんとお話できて、新しい視座を発見できて少し気が楽になった。